○甲賀広域行政組合消防本部火災原因損害調査事務処理要綱
平成元年3月13日
甲消総発第1328号
甲賀郡消防本部消防長名 各所属長あて通達
目次
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 調査の実施(第6条―第15条)
第3章 火災調査書類の作成(第16条―第21条)
第4章 り災証明書(第22条―第24条)
第5章 報告(第25条―第31条)
附則
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この要綱は、甲賀広域行政組合消防本部火災原因損害調査規程(平成6年甲賀郡消防本部訓令第5号。以下「規程」という。)第71条の規定に基づき、火災原因損害調査事務処理について必要な事項を定めるものとする。
(火災又は非火災の決定)
第2条 警防課長又は消防署長(以下「署長」という。)は、次に掲げる火災成立要件を勘案して、火災又は非火災の決定を行い、疑問の生じたものについては、両者の協議により決定するものとする。
(1) 人の意図に反して発生し、若しくは拡大し、又は放火により発生しているか否か。
(2) 消火の必要ある燃焼現象であるか否か。
(3) 消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするか否か。
(4) 公共危険の有無
(5) その他の事項
(調査の分担)
第3条 規程第9条で調査の主体は、原則として火災の発生した区域を管轄する署長とすると定めてあるが、消防署の調査体制が確立されるまでの間、次に掲げる火災は、規程第11条第1項で定める調査員(以下「本部調査員」という。)が調査を実施する。
(1) 建物火災で焼損面積が150平方メートル以上の火災
(2) 死者の発生した火災。ただし、放火自殺を除く。
(3) 負傷者が5人以上発生した火災
(4) 規程第6条第2項で定める爆発その他これに類する災害
(5) その他、消防長が特に必要と認める火災
(調査員の担当区分)
第4条 規程第11条で定める調査員の担当区分は、次に定めるものとする。
(1) 本部調査員は、管轄全域の調査に当たるものとする。
(2) 規程第11条第2項で定める調査員(以下「署調査員」という。)は、その管轄区域内の調査に当たるものとする。
(調査本部)
第5条 規程第13条で定める調査本部において行う事項は、次に掲げる事項を行うものとする。
(1) 火災状況の把握
(2) 調査区域の決定
(3) 警察その他の関係機関との協議(情報交換)
(4) 調査方針及び進行計画の樹立決定
(5) 調査結果の検討
(6) 報道機関への情報提供
(7) その他必要な事項
2 調査本部は、次に掲げる火災のうち消防長又は署長が必要と認める場合に設置するものとする。
(1) 死者が3人以上発生した火災
(2) 死者及び負傷者の合計が10人以上発生した火災
(3) 建物焼損面積が1,500平方メートル以上の火災
(4) 林野焼損面積が10ヘクタール以上の火災
(5) その他消防長が特に必要と認めた火災
3 調査本部の組織及び任務分担は、次のとおりとする。
(1) 消防長が設置するものについては、別表第1のとおりとする。
(2) 署長が設置するものについては、別表第2のとおりとする。
4 調査本部の組織は、火災の規模及び対象により適合した組織に縮少し、又は変更する場合がある。
5 調査本部の開設又は解散は、本部長が実情にあった手段により通知する。
第2章 調査の実施
(火災状況報告書の作成)
第6条 規程第33条第2項で定める火災状況報告書の作成者は、原則として最先着の指揮者(分隊長以上)とするが、特に必要な場合は他の隊員に作成させることができる。
2 火災状況報告書は、出動途上における見分、現場到着時の見分及び防御活動中における見分に区分して燃えの状況等を記載するものとする。
(実況見分調書の作成)
第7条 規程第34条第2項で定める実況見分調書の作成者は、上席者調査員(以下「上席者」という。)が調査員の中から適当と認める者を事前に指名するものとする。
2 実況見分調書の記載事項は、次の項目順序で記載するものとする。
(1) 現場の位置 現場の位置は、出火建物付近の主目標(有名な建物や著名な道路等)からの距離、周囲の粗密度及び水利状況等を記載するものとする。
(2) 現場の状況 現場の状況は、鎮火後における火災現場全体について、現場を変化させない状態を外周部及び建物内部より見分認識した焼き状況等を記載するものとする。
(3) 焼き状況 焼き状況は、出火建物、又は出火箇所に限定して実施する現場探索の進展状況と、これに応じて復元された出火付近における焼き状況について証拠関係を中心として記載するものとする。
3 日を改めて実況見分した場合は、1日を単位として第1回、第2回等として実況見分調書を作成するものとし、第2回以後の実況見分で重要な新事実を発見できない場合は、第2回以後の実況見分調書は作成する必要はないものとする。
4 実況見分調書には、次の図面を添付するものとする。
(1) 現場位置図(案内図)
(2) 焼損建物(物件)の配置図
(3) 出火建物(物件)の平面図
(4) 出火箇所付近図(出火した箇所又は火災原因となった物件等の明細図)
(5) 立体図又は断面図
(6) その他必要と認められる図面
5 図面を作成するときは、次に掲げる事項に注意するものとする。
(1) 方位は、原則として北を上側にすること。
(2) 縮尺を正しくとること。
(3) 正しい記号を使用すること。
(4) 作成年月日、作成者の署名押印をすること。
(写真撮影)
第8条 規程第35条で定める写真撮影は、次に掲げる事項について行うものとする。
(1) 焼き建物(物件)の全景
(2) 各建物(室)ごとの焼き状況
(3) 出火箇所付近の焼き状況
(4) 復元された焼き状況
(5) 発火源の状況
(6) 延焼経路を示す焼き状況
(7) 火災による死者の状況
2 現場写真を撮影するときは、次に掲げる事項に注意するものとする。
(1) 被写体の選定は、実況見分者の指示により決定し、被写体は、その存在位置を明示し得る目標物(柱、敷居、家具調度品等)を含めて撮影すること。
(2) 被写体の撮影は、目的を十分に理解してから撮影すること。
(3) 写真は、撮影場所と撮影方向を明らかにするとともに、被写体にはスケールを当てて撮影すること。
(4) 写真には、努めて人物が入らないように注意して撮影すること。
(5) その他第三者が理解しやすいように撮影すること。
(質問調書の作成)
第9条 質問調書は、物的調査による資料を補足するため主として火災発生に関係のある者(以下「関係者等」という。)を対象とし、任意の供述を記録し作成するものとする。
2 質問は、次に掲げる事項に留意し、対面、電話、電子メール等適切な手段により行うものとする。
(1) 関係者等の基本的人権に配慮すること。
(2) 質問する時間、場所等に配慮すること。
(3) 質問する内容をあらかじめ準備し、効率よく行うこと。
(4) 質問者が意図する方向へ誘導するような質問は避けること。
(5) 関連質問を行い、多角的に聴取すること。
(6) 関係者等が供述を拒否する場合は、執拗な質問は差し控えること。
3 供述内容を質問調書に記録し終わったときは、供述者に読み聞かせ又は閲覧させた上で、次のとおり奥書するものとする。この場合において、供述者が前と著しく異なった供述をしたときは、改めて別に質問調書を作成するものとする。
(1) 読み聞かせ又は閲覧にて確認した場合

(2) 通訳者を介して確認した場合

(3) 供述者が少年であり、立会人がいる場合

(4) 内容の一部を否定した場合

(5) 訂正、削除、追加等の申入れがあった場合

(6) 改めて別に質問調書を作成する場合

(7) 供述者に署名を求める場合

(状況聴取書の作成)
第10条 出火原因の判定が明らかな場合、又は簡易な火災で発見者、通報者、初期消火者等の供述を参考とする程度のものについては、現場における関係者等の供述内容を状況聴取書として作成し、供述者の署名を省略するものとする。
(少年に関する特則)
第11条 少年が関係する火災とは、少年の行為が火災発生の原因となっているものをいう。
2 少年が関係する火災の立会人は、原則として親権者とする。ただし、親権者を立ち会わせた場合、必ずしも正しい供述が得られないと認めるときは、親権者以外の親族、教員、雇主等を立ち会わせることができる。
(精神に障害のある者等の意義)
第12条 精神に障害のある者等の意義は、次のとおりとする。
(1) 心身障害者とは、精神機能の障害により是非を弁別し、又はその弁別によって行動することができない者をいう。
(2) 重度心身障害者とは、精神機能の障害により是非を弁別し、又はその弁別することの著しい困難な者をいう。
(3) 視聴覚障害者とは、耳及び言葉の不自由な者をいう。
(火災原因判定書の作成)
第13条 規程第56条で定める火災原因判定書の作成者は、火災の社会的影響等を考慮し、見分に立ち会った調査員から上席者が指名するものとする。
2 火災原因判定書の記載事項は、原則として次に掲げる項目を記載するものとする。
(1) 出火建物の判定 火災によって焼損した建物が2棟以上ある場合は、どの建物が火元棟であるかを具体的事実を列記して判定するものとする。ただし、数棟焼損している場合でも、全焼は火元建物だけで他の棟は若干焦げている等一見して出火建物が明確である場合は、この限りでない。
(2) 出火箇所の判定 前項において明らかにした建物が、火災初期においてどの部分(位置)から燃焼し始めたか具体的事実を列記して判定するものとする。
(3) 出火原因の検討 出火箇所と判定した場所の火源器具及び建物構造等を考慮し、出火の可能性を有する各火源について、具体的事実を列記して検討するものとする。
(4) 出火原因の判定 各火源について検討した結果、特定な火源について供述された証言及び焼き状況が一致するものについては、燃焼拡大経過を明らかにした上で原因を決定するものとし、証拠不十分な場合で一の火源に限定できないときは不明(調査中)として処理するものとする。
(5) 出火時刻の推定 火災状況報告書、実況見分調書、質問調書、状況聴取書及びその他知り得た事実に基づき、火災に至った経過を十分に調査、検討し推定するものとする。
(6) 参考資料 参考資料として、次の事項について記載するものとする。
ア 出火原因判定等に使用した文献
イ 建物構造及び防火管理等が法令違反で、延焼拡大した場合の理由
ウ 延焼拡大防止に著しく効果のあった理由
エ その他必要と認める参考事項
(り災申告書の受理)
第14条 規程第58条に基づきり災申告書が提出されこれを受理するときは、厳正に内容を調査し申告内容に不審のある場合は、申告者に質問してこれを質すものとする。
2 受理したり災申告書は、調査した被害状況と照合の上損害査定の資料とするものとする。
(火災調査書の作成)
第15条 規程第61条に定める火災調査書の火災番号は、暦年により覚知時間順に番号を付するものとする。
第3章 火災調査書類の作成
第16条 削除
(火災概要書)
第17条 規程第61条第2項ただし書で定める火災概要書は、必要に応じて指令書等の地図、写真等を添付するものとする。
第18条 削除
(書類作成時の注意事項)
第19条 書類作成に当たっては、次のことに留意すること。
(1) 文章は、常用漢字を使用し、現代仮名遣いで作成すること。
(2) センチメートル、平方メートル、温度等のように通常使用されているものに限り、cm、m2、℃等の記号を用いてもよい。
(3) 調査書類は、黒色にて作成すること。ただし、図面及び写真については、この限りでない。
(4) 規程第33条、第34条、第38条、第39条、第52条及び第56条で定める調査書類を、パソコンを使用し、作成する場合は、内容記載枠内の罫線を省略することができるものとする。
(5) パソコンを使用し、作成する各様式の標準的な書式は、次のとおりとする。
ア 使用する文字書体 明朝体
イ 使用する文字の大きさ 10.5ポイント
ウ 文字間隔 3.5mm~4.5mm
エ 行間隔 6.5mm~7.5mm
(6) 文章の加除訂正によって、文章の内容を全く変えるような場合は書類を改めて作成すること。
(7) デジタルカメラ等で撮影した画像データを規程第35条で定める写真説明書に挿入する場合は、必要に応じて拡大縮小及びつなぎ写真の調整をすることができる。この場合において、調整内容を写真説明書に記載するものとする。
(文字の加除訂正)
第20条 調査書類の文字の訂正は、甲賀広域行政組合が作成する文書事務(平成19年5月)の定めるところによる。
(余白部分の処理)
第21条 書類の末尾に余白が生じたときは、質問調書の質問者の記入がある場合を除き、余白箇所を斜線で封じ押印するものとする。ただし、第19条第4号の規定に基づき罫線を省略し、作成する場合は、文末に「以下余白」と記載するものとする。
第4章 り災証明書
(り災証明書の交付)
第22条 規程第66条に規定するり災証明書(以下「り災証明書」という。)の交付については、次の点に留意するものとする。なお、消防機関が発行する「り災証明書」は、火災のり災者に対して発行するものであり、火災に該当しない事案については発行できないものである。
(1) 規程第66条に規定する「関係者」とは、当該火災によるり災対象物及びり災物件の所有者、管理者又は占有者をいう。
(2) り災対象物の同居親族の場合は、り災者に該当するため、同居親族自ら願い出ることができる。
(り災証明書の願い出)
第23条 規程第66条に規定するり災証明書交付願(以下「交付願」という。)による願い出があった場合には、次の点に留意して、発行するものとする。
(1) り災者と申請者が異なる場合については、次のとおり処理すること。
ア 申請者がり災者以外(事業所にあってはその社員、従業員以外)の場合、原則としてり災証明書は交付しないものとする。ただし、委任状によりり災者から委任されていることが明白な場合は、この限りでない。
イ 所有者等の申請者が交付願に記入し、家族等が使者として持参した場合(申請者の印鑑を持参して申請する場合を含む。)は、委任状は要しないものとする。
ウ 代理人が申請者の配偶者、同居親族及び血族第2親等以内である場合は、委任状は要しないものとする。
エ その他消防長が特に必要と認められる者に対してり災証明書を発行することができる。
(2) 申請者が、郵送により、り災証明書の交付を願い出してきたときは、申請者の本人確認を行うとともに、郵送に必要な郵券が同封されていないときは、必要な郵券の提出を求めること。
(3) り災証明書の発行に際し、申請者本人又は代理人であることが証明できるものにより、本人確認を行うこと。また、前1号イにより、使者として交付願を持参してきた場合にあっては、申請者との関係を確認すること。
(り災証明書の作成)
第24条 り災証明書の発行に伴う作成は、次のとおりとする。
(1) 交付願1通で、2通以上のり災証明書を交付するときは、枝番を記載し、次に掲げる例によること。
(例) 甲消本証第1号の1 甲消本証第1号の2
(2) り災日時は、入電日時を記載すること。ただし、覚知方法が事後聞知の火災にあっては、推定した出火日時とすること。
第5章 報告
(調査の報告)
第25条 規程第65条で定める報告の期限は、次のとおりとする。
(1) 次に掲げる火災の火災原因損害調査報告書は、原則として火災を覚知した日から起算して90日以内に報告するものとする。
ア 部分焼けを除く建物火災
イ 出火原因が、放火、放火の疑い又は不明の火災
ウ 死傷者が発生した火災
エ 危険物施設の火災
オ 製品火災(疑いを含む。)
(2) 前号以外の火災原因損害調査報告書は、原則として火災を覚知した日から起算して60日以内に報告するものとする。ただし、規程第61条の2第1項第2号で定める2号処理は、30日以内とする。
(3) 前2号の期限内に報告できない場合は、遅滞理由、作成状況、報告時期等を署長に書面にて中間報告し、調査終了後に報告するものとする。
(火災報告)
第26条 消防長は、火災報告等オンライン処理システムによって、県が指定する期日までに県へ報告しなければならない。
(消防情報支援システムの入力)
第27条 署長は、消防情報支援システムによって、消防長が指定する期日までに調査内容を入力し承認登録をしなければならない。
(写真等の保存)
第28条 写真、図面等経年劣化により視認性が損なわれる調査書類は、適切な記録媒体により、破損等に耐えうるための措置を講じた上で保存するものとする。
(調査書類の供覧)
第29条 署長は、調査結果を警防係及び予防係に供覧し、それぞれの施策上の参考に資するものとする。
(作図記号)
第30条 規程の施行に関する作図記号は、消防用図式記号の制定について(昭和31年9月28日国消発第622号国家消防本部長)に基づくものとする。
(その他)
第31条 この要綱の実施に関し必要な事項は、消防長が定める。
附則
この要綱は、平成元年4月1日から施行する。
附則(平成16年10月1日)
この要綱は、平成16年10月1日から施行する。
附則(平成21年4月1日)
この要綱は、平成21年4月1日から施行する。
附則(平成22年4月1日)
この要綱は、平成22年4月1日から施行する。
附則(平成24年3月30日)
この要綱は、平成24年4月1日から施行する。
附則(平成26年4月1日)
この要綱は、平成26年4月1日から施行する。
附則(平成26年12月25日)
この要綱は、平成27年1月1日から施行する。
附則(平成30年3月20日)
この要綱は、平成30年4月1日から施行する。
附則(令和7年3月26日)
この要綱は、令和7年4月1日から施行する。
別表第1(第5条関係)
調査本部組織表
編成 | 任務分担 | ||
本部長 (消防長) 副本部長 (次長) | 第1班 (警防課長) | 警防課員 | 総合調整 調査方針の決定 関係機関との連絡調整 調査結果の検討 その他必要な事項 |
第2班 (管轄署長) | 本部調査員 署調査員 | 実況見分調査 火災損害調査 火気取扱、発見、通報等の調査 | |
第3班 (予防課長) | 予防課員 | 消防設備等の位置、管理作動活動状況調査 避難、初期消火等の状況調査 防火管理状況調査 危険物施設等の調査 | |
第4班 (管轄署長) | 署係員 警防課員 | 死傷者の調査 救助救出状況調査 消防隊活動調査 現場広報 報道機関等への情報提供 | |
別表第2(第5条関係)
調査本部組織表
編成 | 任務分担 | ||
本部長 (管轄署長) 副本部長 (副署長) | 第1班 | 本部警防係員 署係員 | 総合調整 調査方針の決定 関係機関との連絡調整 調査結果の検討 その他必要な事項 |
第2班 | 本部調査員 署調査員 | 実況見分調査 火災損害調査 火気取扱、発見、通報等の調査 | |
第3班 | 署予防係員 | 消防設備等の位置、管理作動活動状況調査 避難、初期消火等の状況調査 防火管理状況調査 危険物施設等の調査 | |
第4班 | 署係員 警防課員 | 死傷者の調査 救助救出状況調査 消防隊活動調査 現場広報 報道機関等への情報提供 | |